やねうらストーリー

東京で働く人の、頭の屋根裏にあるこぼれ話

もう一度ただいま

数年の時を経て、アメリカに帰ってきました。すごく、すごく、嬉しいです。

 

勢いをつけるためにこないだ観て面白かった「プロミシング・ヤング・ウーマン」の感想を先に投稿したのですが、やっぱり久しぶりに帰ってきたので近況アップデートを書きたいと思います。

 

灯火」を書いたのがもう既に一年ほど前になってしまいました。あの時書いたように、2020年は結構私にとっては辛いことが続く年でした。実はその前の2019年も、さらにその前の2018年も。大学を出るまでのほほんとし過ぎていたのか、もともとのんびりした性格だからなのか分からないのですが、なかなか現実社会に馴染めず、朝起きて仕事に行って、頑張ってパソコンに向かい、深夜にぼろぼろになって家に帰る日本のサラリーマンの生活に疲れ果ててしまい、ついには日記すらも書けなくなったのが2021年半ばでした。

 

灯火」では「幸せになりたい」という気持ちを忘れないようにしたいと書いたのですが、正直「こんな生活じゃ無理だよ」と自分で分かっていたのも事実でした。崩れ落ちる生活の中、会社が非常にフレキシブルで制度が整っていたのが幸いし(ライフスタイルだけバランスが難しいのと、仕事内容があんまり自分に向いていなかった)アメリカの別部署に期間限定で転勤してきました。

 

新しい職場はそこそこ楽しく、新生活も落ち着いてきたので、ブログを書く心の余裕が数年ぶりにできました。振り返ってみると、この数年間は、自分を出来るだけ無にして過ごしてきたように思います。周りに馴染みたいという気持ちが強かった私は、仕事が向いていないかもしれないと感じながらも好きになろうと努め、日本社会は本当に若い可愛い至上主義だよなと思いながらもメイクに努め(周りに比べたらだいぶ適当ではあったと思いますが)、週末は仕事を理解するために新書やらビジネス本やらを読もうと努め(全然頭に入っていなかった)、完全に自分をすり減らしていきました。辛いのは自覚していたのでなんとか解決しようとしていたのですが、如何せん生活の全てが問題だとどこをどう直したらいいかも分からず、仕事を辞めても次を見つけるエネルギーが自分にあるように思えず、だんだん心は枯れていきました。とりあえず仕事と一人暮らしの家があり、お金に困っていなかった自分が辛いというのは贅沢を言っているようで憚られて、自分に「もっと頑張りさえすれば」「もっと仕事が好きになれさえすれば」と言い聞かせ続けたのもプレッシャーとなっていました。

 

アメリカに引っ越してきてから、数ヶ月間で、私はみるみる回復しました。仕事が早く終わるので、平日に自分の時間が取れるようになり、自炊する余裕ができました。なんとなく感じていた「結婚・出産」へのプレッシャーも感じなくなり、のびのびと将来をイメージする余裕ができました。そして本を読んだり、映画を読んだり、それらの感想について思いを巡らせる余裕もできました。一番よかったのは、自分の本音を誤魔化さなくて良くなったことだと思います。別に誰かに何を言われているわけでもなく、私が個人的にそう思ってしまうだけなのですが、日本に物理的にいるとどうも私は自分の本音を言ったり感じたりすることに抵抗を感じてしまうようで「これを言ったら引かれてしまう」「大人しく愛想笑いしておかないと」「そんなの常識はずれ」と自分で自分に制限をかけてしまい、知らず知らずのうちに疲れていることが多々あったように思います。これも「気のせいかもしれない」「誰に何を言われたわけでもないのに」と自分で自分に言い聞かせていたのですが、やっぱりアメリカにきて元気になったのでもう自分を誤魔化すのはやめたいと思います。日本の本や映画、人、文化や温泉など好きなものはたくさんあるのですが、少し遠くにいるのがちょうどいい距離感のような気がします。

 

ただ、この数年間苦労した分、学んだことも多かった気がします。頑張りすぎてはだめ、と身を以て感じたのは大きかったです。これまで多少無理すれば何とかなる場面が多かったり、もともと勉強が性に合っていたりしたことから、いわゆる「これが正しい」といわれた事をひたすら頑張るスタイルで生きてきましたが、自分がただ無理するスタイルには限界がありました。周りが望んでいるから、これが一番波風が立たないから、という道を歩んでいると自分に限界がきてしまう。そしてそれは賢いようでいて自分で自分のために選択する事を放棄した歩き方でもあったんだと身を以て感じました。自分の描く理想を実現する事と現実的な生活を守る事と、バランスを取りながら選択を重ねていくことをしないといけない。まだまだ経験不足ですが、早くそれを楽しいと思えるようになりたいなと思っています。

 

アメリカでは、まず心身の健康を守る事を第一としつつ、人間に戻っていきたいと思います。無の状態を脱したいです。少しずつ本を読むなどリハビリはしているのですが、この調子でもっと分厚い本や真剣なテーマに向き合いたい。そしてそれを形にしたい。人間らしい生活を送り、人間らしく芸術に触れ、人間らしく毎日を過ごしたいと思っています。