やねうらストーリー

東京で働く人の、頭の屋根裏にあるこぼれ話

「Joy Luck Club」を読んだ

中国系アメリカ人の作家Amy Tanの「Joy Luck Club」は1950年代のサンフランシスコを舞台とした小説。中国から様々な苦労を乗り越えてアメリカに移民してきた母たち4人と、彼女らがアメリカで産んだ4人の娘が交互に自分の物語を語る構成になっている。

 

タイトルの「Joy Luck Club」は、サンフランシスコで知り合った母たち4人が付けた自分たちのグループ名。4人は定期的に集まり、麻雀をしながら中国での思い出話やら娘の自慢やらいろんな話に花を咲かせる。お話は4人の仲間のうちの一人が亡くなり、その娘が麻雀テーブルの一角を引き継ぐところから始まる。

 

日本で生まれ育ち、かつアメリカでもある程度時間を過ごした身としては、母たちと娘たちの視点両方に共感する部分が多く、読んでいて面白かった。母たちはアメリカでこそ移民として扱われ、たどたどしい英語で日々の生活にも苦労しているけれど、実は祖国で壮絶な状況に直面し、必死の思いで強さを身につけアメリカまでやってきた過去を持っている。一方でアメリカに生まれたのにどうしてもアメリカ人になりきれない娘たちは、中国式の考え方を押し付けようとする母たちに反発しながらも自分のルーツを現代アメリカで探る。

 

往往にして、人のバックグラウンドや隠し持った過去というのは他人には分からないものだ。家族でさえも。この小説における娘たちも、自分らの母の過去を知らない。どんな思いで父と結婚したのか、なぜ母がアメリカに来たのか。同時に母たちも、娘が感じているプレッシャーや苦労を知らない。恵まれた環境にはあるものの、彼女らは両親が払った犠牲や自分に対する期待に応えないといけない、完璧でいないといけないというプレッシャーと戦っている。一人一人にそれぞれの考えがあり、互いにかける期待はすれ違うこともある。それでも歩み寄ろうとする時、そこには相手の意思を尊重する気持ちと愛情がある。戦争の影やアメリカで生きることの苦悩も描きつつ、根底には母娘の絆みたいなものを描いているせいか、どこかポジティブさが残る読みやすい本だった。

 

構成がシンプルだし色んな視点から話が進むので面白く、こういう「複数の視点が絡まって太く長い話になる」タイプの小説が好きな人はとても好きだと思う。王道のベストセラー、って感じだ。あと私だけかもしれないけれど、アジア系アメリカ人の人の書いた英語はとても読みやすい気がする。この本も例外ではないので、英語で読書したい人におすすめの一冊だ。