大学二年生の冬休み、キャンディクラッシュをダウンロードしたら、冬休みが消えた。ついでに次の学期の最初の二週間くらいも消えたので、こりゃいかんと思って、真夜中、最後の一ゲームをプレイした後に積み上げたデータを断腸の思いで消去した。
そんな経緯があってゲームをダウンロードする時はとても慎重にするようにしている。だからねこあつめも日本で大ブームだった時は「ふーん、私はやめとこ」くらいにしか思ってなかったんだけど、少し前にアメリカに上陸したこのゲームはこちらでもかなりの話題になっていて、あまりに人気みたいだったのでダウンロードしちゃった。
感想:かわいい!おもしろい!はまる!
案の定すっかりはまってしまって、今の私は授業が終わるごとに「ねこちぇっく!」と題した時間をもうけてねこちゃんたちのえさをチェック、アルバムを眺めてはどんなまだ見ぬねこが私の庭に訪れるんだろうとわくわくしている。
2015年末に累計1000万ダウンロードを記録したこのゲームは、ニューヨーク・タイムズで記事にもなった。ライターはRyan Bradley.
この記事が最初に指摘するように、ねこあつめは実際ゲームと呼べるようなゲームじゃない。えさとおもちゃを出しておいたらねこが勝手に自分の庭に来て、勝手に遊んで、勝手に食べて、勝手に帰っていく。ねこあつめにどはまりしてしまったこの記事のライターは、このゲームの魅力は「背景やイラストレーションに表れる日本的な美意識」なんじゃないかと思って、美術史の専門家と話したあげくに藤田嗣治という20世紀前半の画家にたどりつく。彼は日本ではあまり知られていないけれど、アメリカやヨーロッパでは非常に重要な画家とみなされていて、モディリアーニやピカソと肩を並べてフランスで活躍した人だ。なぜか猫のモチーフが好きだったみたいでたくさんの猫の絵を残している。
(ねこの絵はここで
BOOKTRYST: Foujita's Great Rare Book Of Cats Est. $60K-$80K At Bonham's
藤田嗣治についてはここで
accetory.jp読める。)
このライターは藤田嗣治についていろいろ調べたあげく、いや、このゲームの魅力は多分美意識なんて複雑なもんじゃない、と気づく。ねこあつめはねこを「あつめ」ているようで、実際は気まぐれなねこたちの存在を、彼らの生活を、のぞきみているだけ。だからこそもっと見たくて、「あつめ」たくて、夢中になるんだ、とライターは締めくくる。
確かにねこあつめって、ねこを集めているようで、えさ出して待っているだけのゲームだ。私がいくら「ねこちぇっく!」したって、気をつかったねこちゃんたちが「どうもどうも、いつもありがとうございます」って来る回数を増やしてくれるわけじゃない。かといって私が「もういいよ!しらんがな!」ってえさを上げるのをやめたところでねこたちが困るわけでもなくて、任天堂のnintendogsみたいにお腹をすかせてくんくんいうこともなく、彼らは他の人のお庭でばくばくえさを食べつづけるんだろう。
付かず離れずのゆるやかな共存関係が用意されているからこそ、こんなに多くの人が気軽に始められるし気軽に続けられる。そこにねこあつめの魅力があるんじゃないかな、と今日も私はねこちぇっくしながら思う。